農業ほど、変幻自在な産業はない。農業の「6次産業化」(前編)

農家のみなさん、こんにちは!ノウカノミカタです。

みなさんが携わっている農業は、自然から資源を採取する「第一次産業」と位置付けられ、私たちの食を支える重要な役割があります。

そして、それらを加工し新たな価値をもつ商品とするのが第二次産業、流通・販売を手がける第三次産業があります。

これらを組み合わせて多角的に農業経営を行うことを「6次産業化」といい、農作物の加工商品の製造・販売や農園直営の飲食店経営、農業をテーマにしたイベント開催などがこれにあたります。

それぞれの産業の数字の掛け算(1×2×3=6)が名前の由来にあるように、農業や農作物は、付加価値として結びつけられる要素が非常に幅広く、また利益やメリットの期待度が高いため、新しい産業の形を生み出すのにうってつけの宝の山です。

今回は、そんな“農業の6次産業化”が生み出すさまざまな可能性を、前編と後編の2部構成でご紹介します。

ずばり!6次産業化の「いいこと」

新しいビジネスの創出や雇用の拡大、地域資源の活用など、6次産業化によるメリットは多角的に語られていますが、ずばりそのメリットは「収益増加」「所得向上」です。

青果市場に流通している農作物のほとんどが、仕切りと呼ばれる販売に関する結果報告があるまで、販売価格がわからない=その日の所得がわからない状態なのは、農家のみなさんにとっては、もはや当たり前のことかもしれません。

しかし、販売者が品物の価格を決められず、市場相場の動向に左右されるギャンブル要素の高い商品が、他にどれだけあるでしょうか。

みなさんの仕事への誇りやプライドは、栽培にかける時間や労力、費用となり、よりおいしくてより美しい農作物が出来上がります。

しかし、その価値が価格として反映されなければ、みなさんの想いだけではなく、日々の生活や今後の農業経営に関わっていく大きな課題になり得ます。

そんな状況の中、多くの方が納得できるような農業経営の形があるとするならば、それこそが「6次産業化」に取り組み、農業や農作物がもつ価値を、みなさんが決めることなのです。

事例紹介)梅の木オーナー制の試験導入

静岡県のJAふじ伊豆塚原梅部会は、生産者の高齢化が進み、生産工程の中でも特に負担が大きい収穫作業が生育に追いつかないという問題が発生していました。

収穫量、出荷量が減ることによる所得減少が危ぶまれ、また後継者がいないことから、梅の木を栽培するほ場を「負の遺産」と捉えるようになってしまっていたといいます。

そこで、部会とJAが企画したのが、収穫作業の負担軽減と利用、体験料金による生産者所得の向上を狙った梅の木オーナー制度でした。

1オーナー1本制で、年間を通じて梅の木を所有し、収穫期に実った梅を自由に持ち帰ることができる他、シロップや梅干しなどの加工品作りや、ほ場での花見なども体験できます。

また、オーナーとなる対象を企業(とそこに勤める従業員)とし、福利厚生での活用や、梅を原料にした商品開発のきっかけづくりとしても活用しました。

体験後、JAが行ったアンケートでは、「ほ場近辺の竹林道が気持ち良かった」「自然豊かな環境で初めての体験や面白い発見がたくさんあった」といった声が多かったそうです。

これは、普段、農家のみなさんが何気なく体験している、はたまた不便だとも感じているような環境が、実はターゲットによっては価値として提供できる商品になるということです。

あわせてこの取り組みの評価すべきポイントは、近い未来の収益だけでなく、その先の展開を見据え、「負の遺産」といわれていた梅の木を「資産」に転換させることができた点が挙げられます。

まとめ

農業の「6次産業化」(前編)では、農業を“体験”する価値として、新たな産業の形につなげた事例を紹介しました。

次回、後編では、斬新な商品開発や、地域の飲食店だけが提供できる限定メニュー企画など、農作物そのものの魅力にフォーカスした事例をお届けします。

みなさんが生産する商品ではどんな取り組みができますか。ぜひ考えながら、続編をお待ちください。

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