「GAP」真の目的に迫る!

農家のみなさん、こんにちは!ノウカノミカタです。

今回は、農業生産におけるさまざまな工程を適切に管理する取り組みの「GAP(=農業生産工程管理)」についてご紹介します。

GAPとは、栽培から出荷・販売までの一連の流れを、各工程で確認、記録、点検する取り組みのことで、課題や問題点の気づき、改善につなげ、各方面で生産性の向上を図るという目的があります。

生産現場での管理体制そのもののメリットに加え、認証を取得すれば、その体制を活かして、商品のさらなる価値づけにも寄与します。

またGAP認証制度には、認証団体が異なる複数のGAPが存在し、それぞれで認証基準が異なります。

内容を詳しく確認し、取得メリットや費用対効果など、ご自身の農園に合ったGAPに取り組むことが大切です。

出典:「国内におけるさまざまなGAP(各GAPの構成、特徴)」(農林水産省)(https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/g_summary/megurujyousei.pdf)

強固で健全な経営体づくり

2022年にJGAP認証を受けたSATOFARMの佐藤光代表

前記事「農業の3Kを打破する鍵!「スマート農業」って?」では、“より楽に、安全に、正確に”農業を営むことが、理想の経営体であることの鍵だとお話しました。

GAP認証を取得するためのガイドラインでは、それらの具体例が明確に示されており、これを実施することが、健全な農業経営の近道となります。

認証農場でありつづけるために

2022年に、JGAPの認証農場となった静岡県のSATOFARM代表・佐藤光さんは、「第三者認証という形で、他者視点から経営体の評価を知ることができる。時代の流れで変化し続けるルールや仕組みを指摘してもらえる機会は重要」「認証取得がゴールなのではなく、認証農場であり続けるための取り組みを継続することが最も大切なこと」と話します。

他にも、生産者チームで団体認証を受けたグループは、「良いも悪いもさまざまな商品が個々の農家で生産されている現状を、認証取得に向けて一丸となって取り組むことで、意識の統一と生産品目のクオリティの底上げを図れた」と述べています。

認証取得のための実施項目は、食品安全に関するリスク分析と対策の実施や、農薬の適切な使用・保管など、どれも農家の皆さんであれば日々当たり前に行っていることばかりですが、その管理方法を適切な形に仕上げることで、形や名目だけではない、現場に則した労働生産性の向上が期待できるのです。

“安心・安全”を求める消費者へ

現在、食の安全性は消費者が最も重要視するポイントといえるほどに注目されており、農作物の集出荷施設や販売店では、作業の履歴や農薬の使用を管理する記録簿の提出が義務付けられているなど、徹底した安全性の確保が欠かせません。

実際、一つの商品で残留農薬の基準値超過が確認され、産地全体が風評被害に遭った例も多くあり、消費者からの見られ方が広く農業者に影響する大きな問題です。

販路確保にも強い影響

そこで、消費者に、商品の安全性を目に見える形で示すことができるのがGAP認証です。

日本GAP協会が定めるJGAPは、認証を取得した農場と、その農場から出荷された農作物であることを示すロゴマークを発行しており、認証農園は、商品の梱包資材やパンフレット、POPでロゴマークを掲載することができます。

また、農林水産省がGAP認証農産物を取り扱う意向を有する実需者として募集した「GAPパートナー」には、イトーヨーカ堂やイオンなど72社が加盟しており、(令和6年4⽉17⽇時点)販路確保にも強い影響力を及ぼします。

一方で、気をつけなければならないのが、認証取得による費用対効果の検証です。GAPだけでなく、多くの認証・認定制度では、高額な審査費用が発生する反面、一般消費者への認知度の低さが共通課題とされています。

例えば、上で述べた「GAPパートナー」への販売、他の商品との差別化では有利にはたらく可能性がありますが、ファーマーズマーケットや道の駅などで小規模販売をし、農園や生産者の名前で固定客を確保できている場合は、いわゆる費用倒れになってしまう場合もあるため、注意が必要です。

まとめ

一見、メリットが見えにくく、内容が複雑だと感じる取り組みですが、農業現場のより良い環境づくり、さらには認証取得でそれを目に見える価値として形にすることができる「GAP」。まずは小さなことから、身近に取り組める範囲で、農園を、農業経営を、より豊かな環境にしてみませんか。

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