熊本県上益城郡山都町は、有機JAS認証事業者数が全国最多の「有機農業全国No.1のまち」です。そんな山都町で有機栽培に取り組み、生協、小売販売、直売、学校給食などへ生産出荷を行なっているのが「グリーンファーム矢部」代表の西山浩司さんです。今回は有機栽培や有機農業に対する考え、経営への取り組み、パッケージへの想いなどをうかがいました。
有機農業全国No.1のまちについて
https://www.town.kumamoto-yamato.lg.jp/kiji0038604/index.html
西山浩司さん略歴
熊本大学工学部応用科学科卒業後、紙パルプのリーディングカンパニーでエンジニアとして働く。有機農家だった義父(妻の父親)の後を継ぎ、山都町へ。BLOF理論をもとにした有機栽培に取り組む。
目次
「グリーンファーム矢部」の営農状況は?
経営面積は現在3.6ha、有機JAS認証面積と同じです。2毛作で効率化し、作付け面積は5ha、年商は2000〜2500万円ほどです。
ニンジン、ジャガイモ、タマネギなどをはじめとした有機農産物を都市圏に出荷。
山都町のふるさと納税の返礼品用にも出荷しています。
さらに収穫した野菜を加工しお弁当などを地元の道の駅に出荷しています。オーガニックのお弁当なので、なかなか好評ですよ。
有機栽培での経営は難しいと言われていますが、付加価値をつけて販売することで経営の安定化のために「販売取引先は3割以下に抑える原則」を基本としています。
農業との出会い、就農へ
紙パルプの会社でエンジニアで働いていた頃、私は仕事漬けの日々を送っていました。
そんな中で心安らぐひとときだったのが、社宅の空き地で野菜作りに取り組むこと。
慌ただしい日々の中で「人生、仕事ばかりでいいのか」と悩むようになっていったのです。
そんなとき、義父の農園を経営移譲する話を聞き、「それなら私に継がせて欲しい」と提案したのが脱サラ、就農することになったきっかけです。
慣行農法は熊本県立農業大学校の社会人コース、JAインターンで、また有機農法としてはBLOF理論(生態系調和型農業理論)を学びました。
BLOF理論に基づいた農法で栄養価コンテスト最優秀賞を受賞
私はBLOF理論は、オープンイノベーションセオリー(技術革新を組み合わせることにより短期間で最大効果を得るための理論)だと思っています。
営利的要素が濃い農法と異なり、作物栽培の技術として知っておきたい基礎知識だと思っています。
土壌分析・施肥設計のプラン(PLAN)
作物対話型の栽培管理(DO)
作物対話型の診断(CHECK)
次年への技術精錬(ACTION)
このようにPDCAのサイクルを回し、スパイラルアップを図っていきます。
こうした考えは、元エンジニアとして納得のいくものでした。
結果、「グリーンファーム矢部」は、タマネギ、ジャガイモ、ニンジン主要3品目で、栄養価コンテスト最優秀賞を4回受賞。第三者からの評価を得たことで、販路拡大もやりやすくなりました。
有機栽培と一目で分かるラッピングを
「グリーンファーム矢部」では、すべての圃場で有機JASを取得しています。
そのため出荷にあたり、消費者に有機栽培作物であることをしっかり伝えたいと考えています。
ラッピング自体は凝ったものではありませんが、必ず有機JASのステッカー、また熊本県の推進する環境にやさしい農業「くまもとグリーン農業」のステッカーは必ず貼るようにしています。
有機JASを表記することは生産者にとって、信頼性の向上、差別化、環境への配慮といったメリットがあります。
また消費者にとっても、品質の保証、味や栄養価の向上、環境への貢献といったメリットがあると考えています。
環境に負荷をかけない有機農業で未来を開く
私たち人間は、この地球上で急速に発展し、暮らしも便利になりました。その一方で化石燃料を大量に消費、自然環境へ大きな負荷をかけ続けています。
これからの時代は物質文明に振り回されることなく、地域の風土、調和を大切にし、豊かな人生を送れる時代になって欲しいと願っています。
私たちの体、そして命は、水と食物でできています。
これからの私たちの使命は、新しい時代、未来を生きる子どもたちのために、笑顔で健康な生活を送れる社会を実現することではないでしょうか。
そのためにも「グリーンファーム矢部」を継続・拡大し、作物を多くの人のお手元に届けていきたいと思っています。